新原歯科医院

院長ブログ

カテゴリ: サイエンスの話

夕日を見て

“We humans all have varied reactions to the world. The artist in us will admire a sunset and wish we could communicate its beauty in a painting. The poet in us will try to find words—–phisicist is curious as to how far away the sun is—–”

“Principles of Phisics”–by  Bueche and Jerde、 からの引用

 

これは私が大学時代に使った物理のクラスの教科書の序文のはじめの部分です。(私は物理学を専攻して4年生大学を卒業し、歯科大に入りました。アメリカでは医、歯、法学部にはいわゆる4大を卒業してから入るのが一般的なコースです。)物理とはなんぞや?と言うことを解りやすく書いてありました。

 

「人は皆それぞれ違った感性を持っていて、例えば沈みゆく美しい夕日を見た時に、我々の中の芸術家の部分は、この美しさを絵で表せたら・・・、と思うでしょう。詩人は言葉で・・・、そして私たちの中の物理学者の部分は、この太陽はいったい地球からどれほどの距離にあって、どんな温度で・・・、なぜこのような色に見えるのか・・・?と好奇心にかられるのです・・・」

 

と言ったようなことが書かれています。

 

みな、夕日の美しさを感じるところから始まります。そしてそれぞれの感性の違いによって違った味わい方をするのかも知れません。

 

物理がロマンチックだと言うと、おかしな考えだと思われるかもしれません。私は数学や物理がずっと好きで、あまりレベルは高くないのですが、いろいろな数式を見て、またその証明の過程のリズム感であったり、それが作られていく過程などもとても美しく、ロマンチックにさえ感じることがありました。

 

夕日の美しさからなにが思い起こされるのか?ある人は絵画を、また詩を、哲学を・・・、そして物理を、思い起こします。物理学者はいろいろな事象に興味を持ち、質問が浮かび、答を知りたい思う人たちなのでしょう。

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美しいものを見た時、皆それぞれの感性でその美しさを鑑賞します。それが全く違った方向であろうと、その美しさを一緒に共感しているのですね。それは芸術的な方向であったり、物理であったり・・・。同時に同じ美しい夕日を見ながら・・・、なんとロマンチックなことではありませんか?

 

この夕日を見て、皆さんは何を感じるのでしょう・・・?

 

 

 カテゴリ:サイエンスの話

医療の質と医療費

8月27日の日経新聞に、「医師の質を高める」と言う見出しがありました。この週は1面で医療に関してのコラムを連載しているようです。

 

東京のある病院では、「クオリティー・インディケーター」と言う指標を作り、それを元に勤務医の治療の質の改善に取り組んでいるそうです。

 

「固定観念や勉強不足、根拠に基づかない医療は今も多い。反発もあったが確実に改善が進んだ。」と書いてありました。

 

「勉強不足」、「根拠に基づかない医療」、私も港区でやっていた時には、何人かの勤務医を雇っていましたから、同じことで苦労しました。教えても素直に受け止めてくれない歯科医師もいましたし、すべてに目が届く訳でもなく、難しかったです。

 

医療もサイエンスの中に入るのだと思います。いろいろな研究、経験を積み重ねて、医療のマニュアルが出来ています。根拠に基づいて診断し、マニュアルに沿って治療方針を考えて行きます。

 

何の根拠もないのに、なんとなくこれでいいんじゃないかな?なんて治療はありえません。遊びじゃないのですから。

 

どこの国でもあることなのでしょうが、医大、歯科大を卒業してからの訓練と経験によって臨床医として成長して行きます。育てるには時間と根気がいるようです。日本では専門医制度も確立しているとは言い難い状況です。医療の質を高めるにはまだ課題が多く残っているようです。

 

同日の2面に、医療費の増加についても記事が載っていました。高齢者の増加、先端技術の発達等、医療費の増加を促すファクターが多々あります。これからの保健制度は予算の確保に難しい選択を迫られています。

 

ただ、ここでは先進国の医療費のGDP比を比べていて、あたかも日本の医療費が高額であるかのように思わせる記述がみえます。

 

同じページで一人当たりの医療費について書いてありますが、それは何故か国内の比較だけ載せてあります。他の先進諸国との、同じ治療を行った時の医療単価の比較には触れていません。

 

歯科同様に、医科でも日本の治療単価は欧米諸国に比べると驚くほど安いことを書いてくれてもいいのになぁ・・・。ネットで見ればすぐにわかりますが、大きな差があります。それによって日本の国民がどれだけ健康を享受できているのか知っている筈なのに・・・。

 

日本の医療人は他の国々よりも遥かに低い医療費(おそらく1/5~1/3)の中で、少しでも医療の質を上げて患者さんの幸せのために努力しているという事は、是非知っておいて頂きたいと思うのです。

 

 

 

 

 カテゴリ:サイエンスの話

時間よ止まれ

8月も最後の週になります。時間は容赦なく流れて行きますね。

 

6か月、あるいは3か月に一度、必ず検診に来て下さる患者さんたちがたくさんいらっしゃいます。ついこの間お会いしたかと思ったら、「6か月立つのが早いですねぇ・・・。」こんなご挨拶になることが多々あります。

 

高校生のときに(だと思いますが)読んだ小説を思い出しました。時間を止める、と言うわけではないのですが、沈んでいく夕日を止める・・・、と言う話です。題名は覚えていません。

 

HG・ウエルズだったか、コナン・ドイルだったか・・・。さほどの読書家ではない私ですから、読んだことのある作家は限られています。ブラッドベリーでないことは確かです。SFならおそらくこの2人のどちらかですが、覚えていません。

 

その短編小説の詳しい内容も全く覚えていません。なにしろ40年以上前の記憶です。主人公が願い事を叶えてもらうと言う話なんですが、一つだったか、三つだったか・・・?

 

40年前に読んで、殆ど覚えていない詳細のなか、一つだけいまだに鮮明に記憶に残っているのはその願い事が成就した結果なにが起こったのかと言うことです。「彼は沈みゆく夕日を止めて下さい。」と願ったのです。

 

彼の目の前で夕日が止まった瞬間、彼は空中を漂っていました。周りにいろんなものが流れています。そしてすぐに意識は途切れました。

 

太陽は朝、東から昇り、夕方に西に沈みます。これは実は太陽が地球の周りを回っているからではなく、地球が自転しているからだと言う事は、みなさんご存じのことです。

 

夕日が沈むのを止める、と言う事は、地球の自転を止めることになるわけです。

 

地球の円周は4万キロ、それが一日で一周しますから、赤道上では地表は時速約1700キロ近くで動いていることになります。なんと音速より速いんですね。

 

その自転を止めれば、慣性の法則により、地表の物質はすべて時速1700キロの速度で飛ばされることになるのです。(日本の緯度あたりだと、その半分くらいのスピードでしょうか?)電車が急ブレーキをかけたときと同じです。ただスピードが半端じゃありません。

 

彼の願いを叶える事で人類を滅亡させてしまったのです。

 

極点ではどうか?とか、自転を地球のどの部位で止めるのか?とか、細かい事を言うと終わらなくなってしまいます。単純にストーリーを楽しめばいいと思います。

 

理系の私にとって、この結末がとてもロマンチック(おかしく聞こえるかもしれませんが・・・)だったんですね。物理学のロマンです。ストーリーの詳細は全く覚えていないのですが、この結末だけ記憶にしっかり残っているのです。

 

ちなみに地球の公転速度(太陽の周りを回る速さ)は時速約10万キロ(自転速度の約60倍です)だそうですよ。私たちはたった今、時間の流れと共に(太陽を中心とした相対的な関係ですが)時速10万キロのスピードで宇宙を旅しているのです。なんとロマンチックな事ではありませんか?

 

物理、数学に興味のない方には全くピンとこない話かも知れませんね。ただひとつだけ聞いて頂きたいのですが、もしもどなたかが、アラジンの魔法のランプを手に入れたとしたら・・・・。

 

願い事を言う前に、必ず物理学者にご相談頂きたいのです。願いが叶った時に何が起こるかわかりませんから・・・。

 

 

 

 

 カテゴリ:サイエンスの話, 未分類

畑違い

ずいぶん前の話ですが、堺屋太一さんが閣僚(経済企画庁長官だったでしょうか)だった時、日本の米の関税率について、(500%くらいだったかなぁ?)こんな非常識な事をしていは世界中の笑いものになる・・・と言った発言をしました。

 

私も、「そうだよなぁ・・・、」と思ったのですが、当時の農水省大臣の故中川昭一大臣は「ど素人に言われたくない!」と反論しました。

 

堺屋さんはすぐに謝罪しました。元通産官僚であり、高名な作家、評論家であった彼でさえ畑違いの事には知識が不足していたのですね。農業の世界では(農業に限りませんが)自国の産業を守るための聖域には数百%の関税をかけることは常識であることが一般には知られていなかったのです。

 

いまだにSTAP細胞に関して、バラエティー番組のような取り上げ方が続いています。私も生物学、遺伝子学にはど素人ですからなにも言える立場ではありませんが、わたしの高校同期の友人で似たような研究に関係している友人から教えてもらった事があります。

 

遺伝子の映像を紹介するときに見やすいように中を切って切り貼りする事はみんなやっていて、それが結果を変えることもなく、容認されている当たり前の事なんだそうです。

 

私は歯科大に入る前に物理学科を出ていますが、畑違いのことには無知です。専門の事でさえ基本的なことを越えたら素人同然です。ノーベル化学賞をとった方でもきっとそういうことの知識は乏しいのではないでしょうか?

 

その分野の専門家のコメントよりも一般の評論家や、専門外の科学者、またなぜか精神科医の意見までが出されたりしています。

 

IPS細胞の研究で名をはせた中山教授も「STAB細胞でなくとも、何かあるのではないか?」とコメントしていました。また彼は「30歳では研究者として才能があっても、まだ未熟な面もあり、そこを指導し、またそういった若い研究者を守らなければいけない」とコメントしましたが、「未熟」と言う単語だけが使われ、「中山教授がこの研究者の未熟さを批判」と言った表現に歪曲されて報道されています。

 

これでは中山教授もかわいそうですよね。彼の意図とはまるで違った言葉が広がって行きます。私たちのような、ど素人の一般人が誤解しないような報道を期待したいものです。研究者の倫理を語るなら、報道機関の倫理も求めたいではありませんか?

 

もしもSTAP細胞が再現できなくとも、新しい可能性にチャレンジすることが科学、人類の発展に繋がると言うことは過去の歴史から明らかなことなのです。また、捏造と決め込んでいらしゃる方々、もし再現に成功したらもう一度、コロッと手のひらを反すのでしょうか?

 

もうこれ以上この事にコメントしたくありません。なんで日本のネットワークがこぞって特番で完全中継してるんだか・・・・?何を期待しているのだか・・・?

 

アインシュタインの名言があります。「常識とは、人間が18歳までに身に付けた偏見のコレクションである。」

 カテゴリ:サイエンスの話

科学の進歩

長年こつこつと基礎研究を重ねてきた研究者たちの努力と、少々の運、試行錯誤、失敗の繰り返し等、多くの人々の業績の積み重ねによって科学は進歩、発展して来ました。

 

学生時代にレポート提出に悩まされた経験を持つかたは多いと思います。論文の始めに基礎的なこと、現時点まで知られている事の説明をするときには、誰が書いても似たような記述になります。

 

少々文体を変えて、等よくやります。完全に引用してしまえば済むことでもありますが・・・。昔使ったデータを引用することもあります。論文のどこに使ったかによっては少々困ることもありますが、問題ないこともあります。

 

学生気分の残った未熟な研究者がいくつかミスをおかしたとしても、根幹である「発見をした」ということが「事実」であれば、そのミスが発見を揺るがすことはありません。

 

歴史的な発見だからこそ、細かくチェックされましすが、これほど注目されない研究ならば、たまには(?)同じようなミスを含んだ論文も出されている可能性はあります。

 

追試を正確に行った結果、もしも再現性が認められなかったとしても、それならばなぜ偶発的にそのような現象が起きたのかということは世界中の研究者の課題になります(発見が事実なら)。いつか正しい理由を明らかに出来るときが来るでしょう。

 

今騒がれているケースでも、数か月後には追試の結果が出るはずです。どういう結果になるのか期待しています。たとえ良い結果がでなくとも、その失敗は無駄にはならないのです。

 

本来論文が発表された時点ではそれが正しいかどうか解りません。多くの人に精査され、追試が行われ、それから本当の評価がでるものです。

 

少し騒ぎすぎ、持ち上げ過ぎていた方々が手のひらを返したかのように徹底的にたたき続けているように見えます。

 

初期の報道で若い研究者の周りの人からの取材をもとに、その人がすごい努力家で才能ある科学者であるということを私たちは知りました。これは紛れもない事実なのでしょう。

 

才能ある研究者は人類の宝です。私たちには出来ないことをしてくれます。その人たちの努力無くしては科学の進歩はないのです。

 

その若い芽をよってたかって踏み潰すことに何か建設的、発展的な意味はあるのでしょうか?憔悴した若い科学者をなんとか引っ張り出してさらし者にしようとする意地の悪い魂胆が見え隠れしています。

 

報道と言う蓑に隠れたペンの暴力によるいじめと思われないように、節度と品のある、配慮をもった報道をして頂きたいと思うのは間違いでしょうか?

 

先日、横綱日馬富士が研究者を擁護する発言をしました。彼だから許されるんだろうなぁ・・・。普通のひとが言ったらその人まで叩かれそうな雰囲気になって来ているように感じます。

 

ハーバードの元指導教員でもあり、共同研究者の方の発言は興味あるものでした。「いくつかのミステークは発見の根幹を揺るがせるものではない。ある圧力によって論文を撤回するべきではない。」と、いうものです。

 

科学の発展と進歩を妨げないようにしたいものです。それが人類の進歩の礎になり、私たちの生活を豊かにしてくれるものだからです。

 

 

 カテゴリ:サイエンスの話, 日々のこと

発見

小保方さん、すごいですねぇ。さすが理研です。あの若さでこの成果を上げるということは並大抵のことではありません。

 

ただ研究の事以外の「女性であること」「容姿」などのことの方がニュースになっているような気もして残念です。情熱と才能と努力と運・・・、いろんなことが重なっての業績でしょう。

 

私の弟も長いこと研究をしています。彼はUCLAと言う大学の医学部の教授ですが、Oncology(腫瘍学)とHematology(血液内科)が専門です。

 

鎌状赤血球症という病気に有効な薬の治験をやってきています。アフリカ系の人に多く見られる遺伝的な病気でとても苦しい症状を伴い多くは若くして亡くなります。

 

円形で弾力のある赤血球が鎌形に変形し、弾力を失うために毛細血管に詰まり血液が末端に届かなくなります。体中が骨折するかのような痛みを伴うそうです。

 

その痛みを和らげる為にドラッグに走ることもあるとか。

 

この遺伝子は実はマラリアに耐性をもつ作用があるために、アフリカなどマラリアが多く見られる地域で人類に保存され続けたと言われています。

 

私の弟が治験をしてきた薬はこの病気の症状を抑えるのにとても高い効果があることが治験で確認されています。

 

ちなみに「新原先生」をネットで検索すると彼の名前(新原豊)はすぐ出てきます。街角の歯医者の私の名前は全く出てきません。

 

彼の長年の苦労のほんの一部を垣間見ていますので、小保方さんの成功に感動します。

 

 

 カテゴリ:サイエンスの話, 日々のこと

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