新原歯科医院

根本先生のブログ

フッ素

1)歯科医院で「フッ素」を塗りましょう言われるけど、「フッ素」ってなんですか?

フッ素は自然界に沢山ある元素の一つで、海藻や野菜などの食品の中にも含まれています。

これを一定の濃度で使うと虫歯予防にとても効果的です

 

 

2)「フッ素」はどのような効能があるのですか?

酸などで溶け出した歯の表面の石灰分などをもう一度歯につけ戻す作用、いわゆる再石灰化の作用があります。

しかも歯の表面を硬くして酸に溶けにくくしてくれます。

虫歯菌が作り出す酸によって歯が溶かされるのが虫歯ですが、フッ素は虫歯菌の働きを弱めて酸を作る能力を抑える作用もあります。

 

 

3)フッ素は毒だって聞いたことがあるのですが?

確かにフッ素には毒性があるので大量に摂取すればとても危険です。

大量に摂取すると歯に斑点が出たり、歯の色が灰色になってしまうことも分かっています。

しかし歯科医院で使用したり歯磨き剤に添加されている量は緻密に計算された安全な量しか使われていないので、毒性を心配する必要はないと考えられています。

例えば日本ではフッ素を子供達に使用してから虫歯が減ったという調査結果があり、虫歯予防にも有効だということはわかっています。

 

 

4)フッ素入りの歯磨き剤の有効な使い方はありますか?

フッ素は歯に作用するの一定時間、歯の表面にとどまっている必要があります。

それなのでフッ素入り歯磨き剤でよく歯を磨いた後に口にたまった泡などを吐き出すだけにしましょう。 

もし口をすすぐにしてもなるべく少量の水ですすぐようにし、30分ぐらいそのままにし、それから口をすすぐと効果的です。

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食後すぐの歯磨きは危険(?)って本当?

最近「食後すぐの歯磨きは歯に悪いから、少なくとも食後30分以上経ってから歯磨きをした方が良い。」というのを耳にしたと思いますが、以前は「食べたらすぐに磨け!」と言われていたのにどうなの? という質問をよく受けるので少し解説してみます。

 

「食後すぐ磨いてはダメ」という理由の多くは「食後、口内は酸性になり、歯のエナメル質が酸でやわらかくなるので、そこでブラッシングすると、歯の表面を傷つけてしまう。」からというものです。

 

ところで話を戻します。 「食後すぐの歯磨きはダメ」という情報な元になっている実験があります。  それは酸性の強い炭酸飲料に歯の「象牙質」を90秒間浸した後に口の中に戻し、時間を置いてから歯を磨くというように、歯磨きの開始時間によって歯の象牙質に酸がどれくらい浸透するかを見る実験です。

 

実験で「歯の象牙質」を酸に浸していますが、人の歯の構造は、まず歯の一番表側に人体で一番硬い組織「エナメル」が覆っていて、その内側が「象牙質」という骨と似た組織になっていて、「象牙質」を歯ブラシで直接磨くということはありません。

 

それなので象牙質を用いた実験結果をすぐに日常の歯磨きに結びつけることは無理があります。

 

さらに実験では酸性の炭酸飲料水を用いていますが、これも普通の食事に置き換えて結論とするのも正確ではありません。

 

この実験は「酸蝕症」という、いわゆる「酸性」の強い物、例えばスポーツドリンク、柑橘類、お酢などを多く摂ることによる歯への影響を見る実験で、「虫歯」の実験ではありません。 

 

この結論で食後すぐの歯磨きはダメというのは早計すぎます。

 

もちろんお米を食べても口の中はある程度 酸性にはなりますが、唾液が十分に出ていれば酸は中和されます。  それよりも口の中が汚れた状態を続けることの方が問題になるので食後30分後などと気を使いすぎるよりも、いつも清潔を心がけるのが正解です。

 

「日本小児歯科学会」も「通常の食事の時は早めに歯みがきをして歯垢とその中の細菌を取り除いて脱灰を防ぐことの方が重要です。」と勧めています。

 

「ライオン歯科衛生研究所」も次のよう推奨しています。

「酸性の食べ物や飲み物を摂ったら、すぐにお水でうが いするなど、お口の酸性度を緩和するようにしましょう。  むし歯予防のためには、「食べたらみがく」、食事のあ とすぐに歯みがきする、といういつもの方法がおすすめです。」

 

しかし次のような場合は注意が必要です。

 *炭酸飲料を頻繁に飲む。 

 *間食をする。

 *柑橘類を頻繁に食べる。 

             など・・・・

このような場合は口の中が長時間、酸性の状態になるので、歯がボロボロになりやすくなります。

また特別な場合もあります。

例えば嘔吐を繰り返してしまう場合です。

胃酸はとても酸性度が強く、しかも嘔吐物が歯の表面に留まりやすいので、歯をボロボロにしてしまいます。

本当は嘔吐したらすぐに口を「重曹」でうがいするぐらいが必要ですが、せめて水で嘔吐物を洗い流すなどをした方が良いでしょう。

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体の不思議!(続き)

頭部の解剖に耳の解剖は含まれていなかった。 耳は三つの部分から成っている。

外耳=外側に見える耳から鼓膜までの部分で、言うなれば耳かきが出来る部分。  中耳=鼓膜と内耳の間で、鼓膜に届いた音を中耳の中にある小さい骨が内耳に伝達する部分。

 

内耳=音を認識する三半規管というものがある部分で、ここが不具合になると目まいを起こす。

 

さて中耳部分はとても小さく、鼓膜から内示に音を繋げる小さい骨が入っていて、それを保護する周りの骨はとても硬い。 ちょうどクルミの殻みたいだ。

 

そこを開いて中を見ようと考えた。

というのもとても小さいのでクラスメートの誰もやろうとしないからだ。

もっともその部分の解剖はクラスで要求されていないので、普通は面倒臭くてやらない。

 

 

そんな時こそ日本人の器用さをアピールするチャンスだ!

 

外耳、内耳を頭蓋骨から切り離し、拡大鏡を使いながら慎重に骨を削っていく。 鼓膜から神経に音を伝達する骨がとても小さいことは教わっていたが、どれほどなのか全く予想がつかない。

 

次第にクラスメートも興味を持って手元を覗き込んでくる。

 

大和魂を見せつけるために失敗は許されない。

 

慎重に作業を進め、やがて中耳の中の骨が見えるほどの穴が開いた。

 

中に魚の小骨よりもさらに小さい骨のようなものが見える。

 

多分、これが耳小骨、鼓膜から神経に音を伝える小骨だ。

 

さらに慎重!  遂に開いた。

 

長さ2〜3ミリ程度の三本の耳小骨が見事に組み合わさっている。

 

内耳に一番近い小骨は吊革の取っ手部分のような形をしていて、3ミリほどだろうか、人体の中で一番小さい骨だ。

 

外からの音が鼓膜を振動させ、その振動をこんな小さな骨が神経に伝えているのだ。

 

もう一方の耳も解剖して見た。  左右対称で全く同じの骨の組み合わせだった。

 

なんで3つの骨の組み合わせなんだろうか?

 

進化の途中で小骨が1つより3つの方が聞こえると思った誰か(?)が一生懸命に念じて3つの小骨の組み合わせになったのだろうか・・・・?

 

こんなに精密なものが、進化だけでこれだけ精巧に進化したのだろうか?

オモチャの何千倍も精巧に出来ている中耳が進化で出来ているなら、進化で出来たオモチャでも発見されてもよさそうですだが....いまだかってそんなニュースを聞いたことはない・・・・

 

 

続く・・・

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口腔ケアからのインフルエンザ対策

(質問)インフルエンザが流行しています。 予防に口腔ケアが有効だと聞いたのですが 本当ですか?

(答)ある調査では高齢者施設で口腔ケアをしっかりと行った結果インフルエンザ発生が 10分の1になったという結果が出ています
またある学校では生徒の口腔ケアを行った結果、周囲の学校よりもインフルエンザ発生率が下がったという報告もあります。
このように口腔ケアはインフルエンザ対策に有効だと言えると思います。

(質問)口の中とインフルエンザの関係を説明してください?

(答)まず口腔内の細菌とインフルエンザ・ウィルスの関係を説明しましょう。
口腔内には細菌が何億もいますがその細菌によって作り出される酵素があります。
その酵素はインフルエンザのウィルスを粘膜に侵入しやすくしてしまうので、口腔内が汚れていればいるほど 沢山のウィルスが体内に侵入してしまいます。

さらに、口腔内の細菌が作り出す別の酵素は、タミフルなどのインフルエンザの治療薬の働きを妨害することが
わかっています。 ですのでせっかくタミフルなどの治療薬を服用しても口腔ケアをしないままでいると、薬の
効能を抑えてしまい、インフルエンザの治りにも影響してしまうのです。

(質問)それではどうすれば良いですか?

(答)簡単です。 「丁寧に口の中をキレイにする!」です。 いくつかのポイトをあげて見ます。まず、以前はインフルエンザ予防に「マスク」「手洗い」「うがい」があげられていましたが、今では厚生省の予防対策に「うがい」は入っていません。
口に入ってきたウイルスを「うがい」で流してしまうのですが、呼吸しているとひっきりなしに種々の細菌が口に入って来るので、1日に数回「うがい」しても間に合わないのです。

ある調査では「うがい」は「風邪」の予防には有効であり、インフルエンザにはそれほど、という報告があります。 ですのでやらないよりはやった方が良い程度に考えれば良いのでしょう。

口腔ケアで有効なのは「歯磨き」と「舌」の掃除です。まず歯磨きは特に寝る前に丁寧しましょう。口腔内の細菌は夜に増殖しやすいので、寝る前によく磨いて細菌を減らしておくのが有効です。 その意味では、朝食前にも磨きましょう。 夜に増えた菌を食事前に流してしまうのも一定の効果があると考えられます。
次に「舌」ですが、「舌」の表面に細菌が付着するので、歯ブラシで軽く掃除するか、指にガーゼを巻いて舌の表面をなぞってキレイにするのも効果的です。

最後に:インフルエンザの予防に口腔ケアだけが有効なわけではありません。 ゆっくり休んで体調を整える、暴飲暴食をしないなども大切ですが、口腔ケアはそれらの中の有効な対策の一つだということを覚えておいてください。

最後にもう一つ:手洗いする前の手で顔を触らないことも有効な対策です。
汚れた手で目をこすったり、鼻を触ると、手についた細菌を目や鼻の粘膜になすりつけることになるので、気をつけてください。

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体の不思議!・・続き

(時の流れが早すぎる・・・前回が2月だったなんて・・・・)

 

さて、解剖をするときには手順を詳しく記したマニュアルがあり、神経や器官をどうやって見つけるかが細かく指示されているが、最初はどれが神経でどれが筋かの見分けもつかない。

 

しばらくするとどれが神経で、動脈で、静脈で・・と見分けがつくようになってくる。

 

それらを傷つけないように臓器などへの解剖を進める。

 

解剖を始めて一週間くらい経った頃だろうか。

隣で解剖しているグループが騒がしい。

 

どうもマニュアルにあるはずの組織/臓器が見つからないと焦ってる様子だが、

他のグループは「どうせ奴らはまたドジを踏んだんだろう!」くらいに思っていた。

 

騒ぎを聞きつけて教授がやって来た。

 

教授はメスを取ると手慣れた様子で解剖を進めるが

しばらくすると首をひねっている。

 

 

教授がしきりに首を振りなたら「???珍しい! 初めて見た!」と唸ってる。

 

 

驚いたことに、その献体の臓器は、左右全く逆になっていたのだ。

 

 

右にあるはずの臓器が左に・・・・例えば、左にあるはずの心臓が右についている。

 

 

通常、献体には当人の病歴、治療歴など書かれているが何の記載もなかった。

 

 

臓器が鏡に映したように左右逆でも心臓と肺の関係、胃と腸の関係・・どれも正常だった。

 

 

この方が病院に行き、医者が聴診器を通常の心臓の位置に当てても心臓の音が聞こえなかったはずだ。

 

 

・・「心臓が動いてない!・・・でも生きている・・?」と驚かなかったのだろうか・・・

 

解剖をしてみると、人の体は本当に不思議だ。

こんなに素晴らしい体を大切にしないとしたら、本当にもったいない。

 

・・・続く・・・

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体の不思議!

元々音楽の勉強をしていた人間が歯学部に入った。 歯学部の勉強は訳の分からないことだらけだった。 化学記号を見れば視界がぼやけ、薬学で薬品名を聞いただけで気が遠くなる。

 

そんな中で、たった一つだけとても興味を持ったのが「解剖学」だ。

 

歯学部に入学してすぐに「解剖学」がある。

私たちの場合は4人1組に一体与えられ、それこそ頭から足先まで解剖する。

献体された方の医学向上を願うお気持ちに敬意を払いながらの解剖だ。

 

最初は恐る恐る始めるが、次第に身体の不思議の虜になる。

 

体の隅々までに名称がついている。 筋肉がつながっている骨の小さな突起に一つにも名前があり、こんな部位と思われる箇所にも名前がついていて、しかもラテン語だったり聞いたこともない名称ばかりで、試験はそれらの名前だけではなく、それぞれの機能なども全て覚えてなくてはならない。

 

試験に合格するために朝から晩まで解剖の部屋で過ごすので、ランチなどはホルマリン臭の染み付いた手でハンバーグをかぶりつく。

 

食べられないと思っていたがそんなことなど言っている暇などない。

慣れとは恐ろしいものだ・・・・・

 

(続く・・・)

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「図解入りの説明」

前任者から総入歯のNさんを引き継いだ。

 

少々難しい症例ではあったが、総入歯そのものはしっかりとしていたので、必要な調整を行って治療を終えたとおもったが、そこから長い付き合いが始まった。

 

2,3日するとNさんから先日調整した箇所の具合が悪いと電話が入ったので、すぐに来るように伝えた。

 

来院すると口の中を見せるより先に入れ歯のどこが具合悪いかを書いた図面を手にして症状を説明してきた。

 

実に詳細な図面だったが、残念ながら先日調整したところとは関係ない場所だった。

ともかくも口腔内の具合が悪いという場所を調べたが、特にこれといった問題が見られなかった。

しかし少なくともご本人がそう感じているのだからと、その辺りを調整して治療を終えた。

 

それから頻繁に同じようなことが繰り返された。

その都度に問題だという箇所の詳細な図を持参した。

 

正直に言うと、少々億劫にに感じるようになっていた・・・というのは訴える症状と図面とが必ずしも一致しないことも多々あったからだ。

しかしそれでもNさんはやってくる。

 

そうなればこちらも覚悟を決め、トコトン付き合ってみようと気持ちを切り替えた。

 

まず口の中を診る前に図面の説明をじっくりとしてもらう。

その説明をしっかりと頭に叩き込み、それから口の中を診ながら症状を細かく聞きながら確認する。

 

そのようなことを繰り返しているうちに徐々に気づいた。

それは、症状と図面が一致しないというのは私の思い込みであったということだ。

 

実はNさんの訴える症状が図面の箇所に影響を及ぼしていたのだ。

それが理解できたら、それからはNさんが口を開く前に持参した図面を見ただけで症状か分かるようになった。

 

こうなると「阿吽の呼吸」というのだろう・・・それまではNさんはあれこれ細々と説明していたのに、来院すると私に図面を手渡すだけになってきた。

Nさんからは本当に沢山のことを教えられた。

 

総入歯がどんな症状を起こし・・どう調整すればどうなるのか・・

こんなに具体的にしかも明瞭に総入歯の症状や問題箇所を指摘できるというのは凄い!

 

Nさんとの経験がそれからの入歯作成にどれほど役だっただろう。

本当は治療費をもらうのではなく、こちらが勉強代を払わなければならないほどだ。

 

しばらくNさんの来院が途絶え、気になっていた。

半年以上過ぎた頃に奥様に付き添われて来院された。

 

大病をされて入院中だという。

しかし、図面を見ただけて処置してくれる私のところにどうしても来たいと、病院を抜け出てきたらしい。

奥様はご主人を病院から連れ出すなんてと子供達に叱られた、と苦笑しておられた。 当然だろう。

それでも何回も病院を抜け出して来られた。

 

しばらく音信が途絶え、気になり始めた頃に奥様がお一人で来院された。

実は「夫は『明後日、歯科に行く』と嬉しそうに図面を描いていたが急変して息を引き取った。 これが最後の図面です。」と一枚の紙を渡された。

 

紛れもなくNさんの描いた図だ。

これなら少しだけ噛み合わせが滑ったけど痛いところはなかったはずだ・・・・

 

涙が流れた。

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明けましておめでとうございます

明けましておめでとうございます。

 

「一年の計は元旦にあり!」

 

毎年、今年こそは体重を減らすぞ!と意気込んでいるが、昨年は5キロ以上の減量に成功した。(万歳!!!)

 

もっとも減量成功の原因は努力でもなんでもなく、夏から秋にかけて体調を崩して食欲を失ったからである。

 

でもそれからはリバウンドしないようにわずかな努力を続けている。

 

その方法とは食事の時に「ゆっくり」「噛む回数を増やす」ことだ。

 

食べ物を一口入れてユックリ噛むと良い、ということは以前から知られていたが、東京工業大学での実験でも科学的に証明された。

 

平成 26 年 5 月 8 日の東京工業大学ニュースに次のような記事が発表された。

(http://www.titech.ac.jp/news/pdf/n000276.pdf)

 

ゆっくり食べると食後のエネルギー消費量が増えることを発見

-食べ方による減量手法の開発に期待-

【要点】

○ゆっくり食べると食後のエネルギー消費量が増加

○食後の消化管の血流増加はエネルギー消費量の増加に関連

○ゆっくりよく噛んで食べることが良いとされる裏づけ

○咀嚼(そしゃく)を基盤にした減量手段の開発につながる

 

そしてその記事の中に次のような一文がある。

 

「食後90分間のエネルギー消費量は急いで食べた試行の場合、体重1kg当り平均7calだった一方、ゆっくり食べた時には180calと有意に高い値を示した。急いで食べるよりも、よく噛んでゆっくり食べた方がエネルギー消費量が大幅に増えた。体重60kgの人がこの食事を1日3回摂取すると仮定すると、咀嚼の違いによって1年間で食事誘発性体熱産生には約11,000kcalの差が生じる。これは脂肪に換算するとおよそ1.5kgに相当する。」

 

ユックリ、よく噛んで食べる・・・これなら続けられそうだ・・・・多分!

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「骨組み・・そして肉付け!」

米国カリフォルニア州の歯学部に入学した。 それまで全く畑違いの音楽からの歯学部だった。

 

卒業して何年経ても夢で歯学部時代の試験にうなされるくらいに勉強は大変だったが、それでも興味津々の学びであった。

 

今でも解剖学で献体の頭からつま先まで解剖をした人体の不思議への感動は忘れない。

 

歯学部の2年生の夏からいよいよ実際の患者への治療実技が始まる。

 

治療経験のない学生のところに来る患者などいるのだろうか(?)と心配になったが、実際は歯学部に多くの患者が来る。

 

患者もよく知ったもので、米国の歯学部で治療を受けるのは安くて安全なのだ。

 

患者は学生の実地訓練の試験台になるのだから治療費が安いのは当然だが、安全とは・・・?

 

学生が患者治療を行う場合、治療前から治療終了までの間にクリニック・インストラクター(主に教授や経験豊かな歯科医など)による何段階ものチェックが入る。

 

簡単な虫歯治療でも治療終了までに4~5回のチェックを受けなければならない。

 

万が一にも学生が少しでも間違えると、インストラクターが即座に修正する。 そもそも間違える前にチェックが入るのでかなり理想的な治療が行われ、しかも安全に治療を受けることができるのだ。

 

ちなみに在籍した歯学部では卒業までに相当数の患者を受け持ち、しかも卒業までに義歯は◯◯症例数以上、金冠は◯◯症例以上というように色々な治療法を一定数以上終了しないと卒業できないので、卒業時にはかなりの治療数を経験していることになる。

 

また夏休みなどは医療奉仕活動に参加できる。 私の場合は約3週間メキシコに行った。

 

学校での治療や医療奉仕活動などを加えると卒業するまでに100人を超える患者の治療を経験した。 これは日本の歯学部と大きく違うところだろう。

 

話を戻すが・・・・

 

治療実技でインストラクターは学生が行っている治療の確認だけではなく、治療を実演して見せてくれることもある。

 

当然インストラクターはかなり理想的な治療を学生に見せてくれる。

 

こう書くと何となく素晴らしく聞こえるが、各段階でのインストラクターのチェックはかなり厳しく行われる。

 

そこで学生は少しでも優しそうなインストラクターを求めてクリニック中をハイエナのようにうろつく。 学生がなるべく安易な方に流れるのは常だ。

 

厳しいインストラクターにあたると、治療の最初からのやり直しを命じられることもある。 そうなるとさすがの患者も心配そうにこちらを見るし、こちらも緊張して手が震えそうになるのを必死に抑えることになる。

 

そのような訓練を受けて卒業するので、いよいよ独立して自分一人の判断で治療を行うようになっても大丈夫だと思っていたが、当然だがインストラクターは居ない。

 

最初の頃はチェックする人が居ないので”この治療計画でいいのだろうか?” ”この治療法で正解だろうか?” と不安になった。

 

そのように迷っている時になって初めて実は厳しい指導の方がとても役立っていたことに気づいた。

 

特に難しいケースに直面した時に、厳しい指導の中で教えられたことから治療方法、治療の目標をどこに置くべきかなどを見定めることができた。

 

卒業して数十年経った今でもあの厳しい指導が常に頭の片隅にある。

 

歯を削り、調整するためには1/10ミリ、いや1/50ミリ以下の精度が求められる。

 

そのわずかな誤差で食事や日常生活に支障をきたすことすらある。

 

”厳しい指導”はその少しのことも疎かにしない歯科医師を育てたいというインストラクターの熱意だったのだろう。

 

厳しいインストラクターが私の歯科医師としての骨組みを作ってくれた。

 

私はその骨組みにどれほどの肉付けをすることができたのだろうか?

 

多分、骨組みに少しは肉付けが出来たのかもしれないが自分ではわからない。

 

果たしてバランスよく、そして少しはスマートに肉付けできているだろうか?

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ほんの小さな黒い点

カリフォルニアの歯科大学を卒業してロサンゼルス近郊で開業しはじめ何となく自信がついてきたと思っていた頃、三十代前半の女性が来院した。

 

物静かというよりは寡黙な女性で、虫歯が気になるということ以外にあまり話をしなかった。

 

訴え通りに検査でいくつかの虫歯が見つかり、検査結果を見せながら治療計画を説明したが、理解したのかどうかあまり反応がなかった。 それでも次回の予約をされて帰られた。

 

それからも治療に来院されてもほとんど会話はなく、あまり関わって欲しくないのだろうかと気を使いながら治療を続けた。

 

大きい虫歯から順番に治療を始めた。 さてその日は上の前歯の間に小さく黒く見える虫歯の治療をした。

 

その方の次の予約日になった。 予約時間の少し前に一人の女性が元気良くオフィスのドアを開けて入ってきた。

 

急患が予約なしに来院した(?)と思った・・途端にその方がニコニコとしながら「先生! 元気???」

 

驚いて、入ってきた方を二度見すると、前回まで笑顔一つ見せず、寡黙で何を問いかけても反応のなかったあの女性に見える・・・・失礼を承知でまじまじと顔を覗き込むと「前回の治療後に家に帰ったら夫と子供も先生みたいにポカンと私の顔を覗き込んでた。」と笑っていた。

 

話を聞くと・・

「上の前歯の間にあった黒い虫歯が長年気になっていて、毎朝鏡を見ては落ち込んでいた。」

「人前で話したり笑ったりするとその黒い点が見えるんじゃないかと考えると、友達付き合いも疎遠になり、話すときには手を口に当てるようになってしまった。」

「そうなると人に話しかけても聞こえないと言って聞き返されるのでますます人前に出るのが嫌になっていた。」

「もう自分は一生こうなんだと思い込んでいたけど、前回の治療で先生が前歯を何かしていたので、帰りの車の中で鏡を見たら黒い点が無くなってた!」

「運転しながら嬉しくて嬉しくて、人が見たら気味悪るがれるだろうと思うほど笑いながら家に帰ったら、夫も子供に気味悪るがってた・・」と嬉しそうに話した。

 

その方が最初に来られたときに上の前歯のことは何も言われなかった、と私は思っていた。

実際に何を問いかけてもほとんど会話が成立しなかった。

思い返すとその方が最初に来たときに「虫歯が気になる・・」といって前歯をわずかに指差していたことを思い出した。

 

しかし口の中には早急に治すべき虫歯が見えたので、そのことばかり説明し、大きい虫歯から治療するように説明していた。

でもその方は本当は前歯の黒い点を何とかしたいとすがる思いで来院されていたのだ。

 

しかし私はその方の小さいサインを見落とし、他の治療に手をつけ始めた。

医療的に見たら私の治療計画は間違っていなかったかもしれないが、その方にしたら私は間違っていたのだ。

 

それ以来、私は患者さんの小さなサインをできる限り見落とさないように心がけるようにした。 それでも完璧ではないので、繰り返し話を聞くことを忘れないようにしている。(時々、スタッフに先生は患者との話が長い!と叱られることもあるが・・・)

 

患者さんが一番訴えたいことにシッカリと向き合うことの大切さを学び、それがなければ患者さんと医療者の間に信頼関係が生まれないことを教えられた。

 

少し鼻が伸びかけていた駆け出しの私にとってこの患者さんは素晴らしい先生になった。

その後、この患者さんは多くの方を紹介してくれた。

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